なぜ日本の野外指導団体は融合しないのか!?

ことのはじめ

アメリカでは、冒険教育、環境教育、教育キャンプなどの野外教育に関わる分野が1950年代から1970年代に設立し、独自に専門分化してきた歴史がありますが、その研究の統合を目的にしたのが、現在参加しており、1992年に設立したCoalition for Education in the Outdoor(CEO)です。2年に一度の学会で、2022年で30年になりますが、会としては15回です。今回20年ぶりに参加して、相変わらずの研究の発展のために無駄のないプログラムに改めて居心地の良さを感じました。

学生の参加はほとんどがPh.D.スチューデントで、大学で磨かれているだけあり、初々しく自信満々にプレゼンします。彼らとの会話ももっぱら研究の話で、久しぶりに自分のドク論文の話を引っ張り出さずにはいられませんでした。

そして、スキー指導でドク論を書いている学生と話が盛り上がり、自分もスキーの研究をしているとちょっと盛ってみたりして(ほんとに何編か出してますから)、彼との話の中で、とても印象に残り、納得したことと、学会の前に参加したWEAのCEOクリニックで、なぜWEA以外のプロフェッショナルが改めてWEAの資格をとりにくるかとても腑落ちしたので、「日本の野外の団体がなぜ融合しないのか」、ちょっと広く考察してみました。ブログならではの、自分の経験値からの引用となることをご容赦くださいませ。


ヨーロッパとアメリカの野外指導の違い

ヨーロッパのスキー指導者といえば、国家資格となり、子供が憧れる仕事の一つですが、彼のスキー指導に関する主張によれば、ヨーロッパの指導は技術体系に基づいたトレーニングが中心であることに対して、アメリカの指導は、トレーニングティーチングエクスペリエンスの三つのバランスを大切にしているとのことでした。私はアメリカでスキー指導を受けたことがないのでなんともいえませんが、確かにオーストリ、フランスの影響を受けた(スキー指導の専門家の方、間違ってたらご指摘ください)日本のスキー指導は、技術体系に基づいたスキルアップのための指導が中心ですよね。私は勝手にアレンジしていますが、SAJの教程に基づいて指導してもつまんねーだろーなーって思います(一応正指、A検だから言えること。東連から外されそう…)。指導者も、自分がいかにうまいかを見せつけるような方が多く(うーん私も確かに少しあるかも…)、うまくならないといけないような気にさせちゃいますよね。加えて、ヨーロッパがベースのJMGAのカリキュラムに関しても、登山ガイドステージⅡまでの経験で言えば、技術的な内容なとてもためになりますが、求められるガイディング技術はワンウェイで、SPECとは大きく異なります。


アメリカの野外指導団体

今回参加したWEAのCOEクリニックというのは、WEAの資格を持っていない人が、それまでの野外指導歴を前提として、飛び級でCOE資格を取るためのコースです。必然的にWEA以外のプロフェッショナルが参加するのですが、まずはじめに驚いたことは、そのような方々は日本ではWEA資格を取るとは考えられないし、さらに驚いたのは、WEAのトレーニングを受けていないのに、どなたもメチャクチャSPECということです。つまり、どのトレーニング機関でも、ある程度SPECに近いトレーニングをしているといことです。繰り返しますが、そして、それぞれの教育プログラムで、WEAの資格を出すことに価値があると考えていることです。だからお金と時間をかけてクリニックを受けにきています。

以下、オリジナルのモデルですが、AMGAは、アメリカンマウンテンガイドアソシエーション、ACAはアメリカンキャンピングアソシエーションですが、それぞれの専門性がありつつも、トライアングルをしっかり満たしているイメージです。COEクリニックでも、ガイドがバックグランドの方は、かっこいい感じでティーチングを行い、環境教育の方はお花のイラストいっぱいのポスターを準備するなど、それぞれの個性が極端に出て楽しいティーチングでした。WEAは強いて特徴をあげれば、スキルもガイドほどではないし、ACAほど体験、体験ってわけではないので、あえてティーチング寄りにしてみました。


日本の野外指導団体

一方、こちらは日本のイメージです。念のためにJMGAは日本山岳ガイド協会、NACJはお馴染み日本キャンプ協会です。そもそも価値観が違うので、お互いのやっていることに目が向かず、ましてや他分野で学ぼうなんて到底考えられません。WEAJがかろうじてお互いをオーバーラップし、その証拠に、キャンプ協会とオーバーラップしているメンバーも多いですし、私自身も長年のD1です。同様に、ガイドの方もBCの野外研修に参加してもらい、WEAの価値は理解してもらっていると思いますが、資格の取得までは至っていません。私自身登山ガイドステージⅡであり、ガイドの方々と定期的に更新講習で山のスキルをシェアしたり、山の話をするのを楽しんでいます(WEAのメンバーは山の話が盛り上がらないのがちと不満…)。一方キャンプ協会の方が、JMGAの資格を活用していたり、その逆も少なくとも私の近くではおりません。


明日の連携を目指して

WEAのミッションにはありませんが、私自身WEAの国内導入を考えたときに、野外教育と環境教育、キャンプ指導者とガイド、研究者と実践者、日本と海外をつなぐ橋渡しの役割になればいいなと考えていました。日本はいい意味でハイブリットなので、ヨーロッパの良いところ、アメリカの良いところ、全て取り入れて、これまでの日本的な折衷案では最大公約数しか生まれませんので、それぞれをスパークさせて、ヨーロッパにも、アメリカにも負けないコンパクトで多様な自然の中で、最小公倍数的な野外指導業界ができればいいなと思います。