コラボレーションテッパンワークショップ

価値観の異なるメンバー、思考性の異なるメンバーと、どのようにして良いチームを作るか、コラボレーションテクニックを理解するためにテッパンワークショップです。

ちなみに、まず思考性の異なるって、どういうことでしょう。人は皆自分の考えが正しいと思って意見を述べたり、行動したりしますが(まちがっているのがわかっているのに行動する人はいませんよね)、実は、みなさんと全然違う思考パターンでものごと考える人もいるのです。つまりその人たちにとってみたら、皆さんが何を言っているのかわからないということです。ちょっとそのパターンをレビューしてみましょう。

  • Ideas(What if?)タイプ
    • 強み:アイディア、リスクテイク、柔軟性、カオスの受容、イニシアティブ
    • 弱み:ルール・計画の無視、目的を見失う、細かいことを気にしない、アイディアを押し付ける、激情的
    • Yes:Maybe、他のアイディがあれば変更
    • No:NO、すでに自分のアイディアある
  • People(Who?Whom?)タイプ
    • 強み:感情理解、関係づくり、集団雰囲気、居場所づくり、メンバーのケア
    • 強み:優柔不断、人間関係が深まらない、効果よりも人間関係優先、意思表示をしない、リスクテイクをしない
    • Yes:Maybe、他の人の意見があれば変更
    • No:Maybe、基本的にはNoと言わない
  • Product(What?)タイプ
    • 強み: 結果の質、課題遂行、遂行意欲、知識・情報
    • 弱み:一人で作業をする、作業の意味を考えない、人間関係より結果を優先、無駄が苦手
    • Yes:Yes、Noを受け入れない
    • No:No、Yesを受け入れない
  • Process(How?)タイプ
    • 強み:計画・組織化、丁寧・詳細、手順、慎重
    • 弱み:計画変更が苦手、ルールを最優先、頑固、カオスを耐えられない
    • Yes:Yes、基準、ルール、計画に照らし合わせる
    • No:Maybe、基準に合えばYes

The Backcountry Classroom, 2005)

確かに、こういう人いるいるって感じですよね。これはどのタイプが正しいとか間違っている、優秀か劣っているかということではなくて、チームが目的を達するためには、全てのタイプが必要なのです。でも、コラボレーションテクニックを使わなければ、この人たちが集まった会議がどうなるかは、みなさん容易に想像がつくと思います。

ではどうしたら良いのでしょう?

コラボレーションで重要なことはまず自分の特性、メンバーの特性を知ることです。そのために次のようなアクティビティをして、メンバーを4つのタイプに分けます。

  1. ワークショップの空間の真ん中に、空間を2分するように(室内であれば、壁と並行に)ロープを置きます。
  2. 一方の端を、「水」タイプ(説明例:柔軟でどのようにでも方向を変えられる)、もう一方を「風」タイプ(説明例:決まった目的や計画を貫く)とし、両端に行けば行くほど、その傾向が強くなるとして、一直線状に並んでもらいます。
  3. この時、メンバーの位置をお互いよく観察し、全体の意見と合わないところに立っているメンバー(つまり勘違い)がいたら、正しい位置に移動してもらいます。
  4. 次に、最初のロープとは、直角に、空間を4分割するようにロープを置きます。ちょうど四次元座標と言った感じですね。
  5. 2本目のロープの一方の端を、「炎」タイプ(説明例:情熱的で、気持ちでメンバーを引っ張る)、もう一方を「氷」タイプ(説明例:冷静沈着、常に一歩引いて全体を見る)とします。今度は今っ立っているところから、2本目のロープと並行に、つまり斜め移動なしで、自分にしっくりくるところに移動してもらいます。
  6. さあこれで、メンバーが4つのリーダーシップスタイルに別れましたが、ここでもう一度、メンバーの位置をよく確認して、全員がしっくりくるところに移動してもらいます。最終的な決定は、本人の意思と違うところに無理矢理移動させなくとも、本人の意思を尊重しても大丈夫です(後で違和感を感じてくるのは本人ですから)。
  7. ちなみに、まだ人間関係ができていないグループだと、全体として、「水」タイプ、「氷」タイプに移動する傾向があります。まだ、グループの目標や相手のこともわからないので、当然ですよね。つまり、このアクティビティは、メンバーの特性がなんとなくわかってきたフォーミング後半や、ストーミング明けのチームを再形成するタイミングがいいかもしれませんね。(ストーミングの時にこんなアクティビティやってる場合ではない!メンバーに「はっ何言ってんのこのイントラは」て思われてしまうかも。)
  8. さらに、もう一つ、できる指導者のウルトラテクニック。もし参加者に偏りがあり、ある象限が少なくなったり(1-2名)、もしくは誰もいなくなってしまった場合には、指導者がその象限に入り、そのリーダーシップスタイルを演じます。そのためは、それぞれの象限の特性を完全に理解していなくてはなりません。まさにウルトラテクニック。

次のステップとして、それぞれのグループの特性を分析する段階です。勘の良いみなさんはもうお気づきかと思いますが、そうです、「炎&風」がアイディアタイプ、「炎&水」がピープルタイプ、「氷&風」がプロダクトタイプ、「氷&水」がプロセスタイプに近い特性を持ちます。でも、ここで、自分たちにどんな特性があるのかわからないうちに、あたなたちは何々タイプですって押し付けるのはイヤなので、私はいつも自分たちのリーダーシップスタイルを動物に例えるならば、なんてやり方をしています。ただし、まずは自分たちの特性を話し合った後にね。こんな感じで行います。

  1. まずは、自分たちの普段とっているリーダシップスタイル、強み、弱みについて、グループごとに話し合ってもらいます。ほとんどの場合、あるあるネタなので、とても盛り上がります。
  2. 話し合った内容を簡単に紹介してもらいます。指導者は、その象限の特性をより印象づけるように、ファシリテートするといいでしょう。
  3. 私はここで、上述した動物に例えたネーミングを決めてもらいます。これ自体もとても盛り上がるディスカッションになりますよ。加えて、その後のアクティビティを、犬さんチームとか、猫さんチームとか呼べて進行しやすです。もし被ってしまったら、話し合いで動物名は分けた方がいいかな。以前犬種で分けたこともありました。
  4. 次に、自分が気持ちよく、一緒に「仕事」をするのであれば、どこのグループとやりたいか相談してもらいます。仕事でなくとも、共に目的を達成する何かであればOKです。「部活」とか、「勉強」とか。ただし「遊び」は目的がないので、リーダーシップスタイを必要とせず、不適切です。
  5. その結果、ほとんどの場合、加えて理論的に、対角線のグループになります。もちろん異なった場合も無理矢理理論に誘導せずに、その意見を受け入れましょう。ホワイトボードがあれば、この段階で記録しておいた方が、視覚的にわかりやすいですね。
  6. 最後に、一番一緒に仕事をしたくない、一緒にいると自分がいいパフォーマンスを発揮できないグループを話し合ってもらいます。人って、ネガティブネタ好きですよね。一緒にやりたいグループよりもこっちの方が必ず盛り上がります。この時に、その象限にいる個人を対象にしないように注意してください。あくまで、グループの特性として考えてもらいましょう。(私は、ここであえて個人いじりをしてどっかーんとなる時もありますが、ひんしゅくをかう失敗もよくします。)
  7. こちらの結果は、ほとんどの場合、自分の両サイドのどちらかを選びます。つまり、反対側のタイプのリーダーが不在となるので、自分たちの弱みをカバーできる人がいないということですよね。こちらも、理論通りに行かなくても、メンバーの意見を採用しましょう。そして、ホワイトボードに記録。
  8. さて、この結果をまとめると、一緒にやるとうまくいく人が対角線、一緒にやってもうまくいかない人が、両サイドということが理解されます。ワークですので、100%きれいに結果が出るわけでもありませんが、私の経験上、この理論が全く通用しないような結果は一度もありません。もうそうなったら、グループ分けがよっぽどひどいが、指導者がリーダーシップ理論を理解していないのが原因でしょう。

さあ、自分たちの特性がだんだんわかってきました。でも、ここで終わったら、単に自己分析で、コラボレーションテクニックではありませんよね。通常はここで、「対角線にはなるのは難しい(だって真逆の性格)」&「両サイドにはなるのはさほど難しくない(半分その性格だからね)」原則を説明し、チームとして欠けている象限に誰かが移動して、調和の取れたチームになるか説明します。でも、ここまでやって、最後がレクチャーっぽくて、全然SPECじゃないよというみなさんっ(熱)!ワークショップの最後を締めるくくるにふさわしい、全員が府に落ちる、ウルトラテクニックを紹介します。

  1. 全員に立ってもらい、一番最初に立っていた場所を思い出して、もう一度その場所に立ってもらいます。
  2. 全員で近くの人と手を繋ぎ、一つの円になってもらいます。この時自分のいる象限から出ないように注意してください。
  3. そうすると、左下の図のように、人数の多い象限に偏った円になりますよね。この段階でチームはパワーバランスが悪くうまくいきません。
  4. 次に、自分の象限から出て、円の中心が、座標の中心になるように指示をします。つまり、バランスの取れたいいチームになってもらいます。その時何が起きたのでしょう!
  5. そうです、右下の図のように、隣の象限に思考性の近い人がちょっとスタイルを変えるだけで、とてもバランスの取れたチームになるのです。このアクティビテにより、自分の個性と、いろいろな考えを持つ人がいることを理解し、チームに貢献するためどうしたら良いか、コラボレーションテクニックを直感的に理解できます。

最後のアクティビティよくなですか?実はWEAのコースで生徒が考えたものをパクってブラッシュアップしちゃいました(WEAはコースはこんな新しいアイディアの宝庫)。実はこのワークはまだまだ奥深さがあります(試していないですけど)。もし受講者が、コンディショナルアウトドアリーダーシップ理論、通称COLTを理解していたら、状況に応じて、チームがどの象限のスタイルを強めれば良いが理解できて、コラボレーションのシミュレーションもできるというわけです。さらに、グループダイナミクスのステージで何が起こったのか分析にも使えそうだなあ。いやあ、コラボレーション深いっすね。一緒にコラボレーションを極めてBe Outdoor Professional。

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コラボレーション、リーダーシップについて詳しく知りたい方は、アウトドアリーダー・デジタルハンドブックを参考にしてください。

本格的に野外指導を勉強し、指導者を目指したい方は、Wilderness Education Association Japanのサイトをご覧ください。

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