LNTJを始めてから、野外だけではない色々な職種の方とお付き合いさせていただけるのは、私にとっても残りの人生にとって大切な宝となると思います。そんな方のお一人で、LNTJマーケット委員会委員長の栗原亜弥さん、通称クリは、かつて某アウトドア系アフィリエイトマーケティングで100万人登録まで持っていった実力の持ち主ですし、現在も林業系の企業で、HRを担当するなど私が生きてきた道とは全く違い、全く異なった能力を持ちながら、同じLNTの普及と発展というビジョンに向けて作業ができる方です。
そんなクリと、この度第12回ジャパンアウトドリーダーシップカンファレンスで、リスクマネジメントのワークショップを行うことになりました。クリは、これから日本でローンチされる、ビリスター社のオンラインアウトドアリスクマネジメントコースで、企業リスクマネジメントの講師として参画してもらう予定です。そんなクリでも、アウトドア指導者が比較的得意とするアイスブレイキングは大の苦手。そこでこんなのやったら盛り上がるんじゃないと話した、クリが絶対にお願いしたくないガイドの要素が、クリは直感ですが、めちゃくちゃ野外産業に直結しているし、科学的であるので、ブログのネタにいただきました。業界に忖度なしの立ち場なので、とても信憑性がありますね。
10 資格を持っていない
そもそも「論外」とのことでした。彼女が働く業界では、職能資格やトレーニングを受けていることが、仕事に従事する上での当たり前とのことです。一方で、アウトドア指導者にとって、必要とする技能は非常に広く、包括的なものなので、なかなかこれをとっておけば大丈夫というのがないもの現実です。そういった意味で、付加的な資格を含めた、WEA6+1は、彼女に雇ってもらうために、非常によくデザインされた資格と言えるでしょう。
9 資格を見せびらかす
資格を持っててもダメってことですね。確かに自分の履歴にやたら資格を書きまくる方いますよね。自分はこんな職能を持っていますって示すのは重要なことですが、 あまりにもなんでも書かれて、その中にあまり薦められない資格があると、その人の評価まで下げてしまします。私が書くのはいつもWEAとWMTCとLNTだけ。もちろんそれ以外の資格も持ってますよ(電気工事士とかw)。ただ、自分は何の専門家なのかと示すために、必要十分な情報にとどめています。
8 野外の知識、技術がない
野外指導者の勢力源泉(受け手への送り手の影響力)の研究によれば、キャンプ前半は、かっこいい、かわいい、面白い指導者の勢力源泉が高いのに対して、キャンプ後半になればなるほど、知識、技術のある指導者の勢力源泉が高くなるというデータがあります。短時間なら、キャラベースの指導でなんとかなりますが、できる方にはすぐに見透かされるということですね。キャラももちろん必要ですが、本質は確かな知識と技術です。
7 知識、技術を見せびらかす
これも、逆にきたかいっ。野外指導者の習熟過程を研究したマークによれば、これは指導者が第2段階で誰もが経験する段階とのことです。第1段階が無知で、あまり話さない、適当に受け流す、第2段階が知識が豊富になり、必要以上のことを見せたがる、話たがる。第3段階が、それを続けることによるアパシー、時にバーナウト、第4段階が、対象者に合わせ、最適介入ができるレベル。第2段階を早めに切り抜けるためにもSPECのSの理解があるといいですね。
6 段取りが悪い
岡村の普及の名作「野外のことば」によれば、「準備8割、本番2割」だそうです。それは、キャンプにせよ、ガイドにせよ、全く同じことが言えると思います。参加者にどんな価値を提供できるか考えたときに、膨大な下見と、関連する情報の収集に基づきカリキュラムデザインをし、プラス、あらゆる状況でも危機対応を想定し、脳内で価値を提供できるシミュレーションができれば、あとはその通りに進めるだです。ミクロのレベルといくと、LNTのティーチングなんかこのトレーニングになりますよね。
5 場を作れない
こちらは空間デザインです。ふりかえりひとつとっても、サークルアップ、不快な自然物、危険物からの隔離、指導者の立ち位置、参加者にとって快適な状態、一人ずつの傾聴、他者の受容など、これだけのことで、ふりかりの質が全く異なったものになります。登山中のちょっとした休憩も、まさにふりかえりの一部です。一つ一つの空間デザインの良し悪しで、トリップの質が全く異なったものになります。
4 暗い、声が小さい
こちらは一見性格や、身体特性のようですが。。。。ただ、シャイな性格、あまり通る声が出せない方も、コミュニケーションテクニックを身につければ、聞かせる声になります。私は、聞かせたい時はむしろ、声のトーンを落として、参加者に聞く耳を持たせます。皆さんご存知の通り、ハイトーンの声も使い分けられますので、それに越したことはないかと思いますが、コミュニケーションパスのノイズを理解するれば、「暗い、声が小さい」が、「冷静で、落ち着いた声」の強みになるかもしれませんね。
3 女性の視点がない
私は間違いなくチェックが入るかもしれません。彼女曰く、男性にはない体調変化や、化粧などとのことです。いつももっと頑張れるじゃん?すっぴんの方が自然でいいよ、というは男性の価値観かもしれません。また、大丈夫な人には全然大丈夫ですが、巨大なガ、カマドウマなど恐怖と闘いながらの夜のトイレかもしれません。たかが虫じゃんって思ってしまっている私は、今まで女性からひんしゅくを買いまくっていたのでしょうね。彼女が元いたキャンプ場業界では、女性がキャンプ場を選ぶ理由のベスト1は、トイレがキレイとか。そういった意味でも、ボランティは最近女性の方が多いですが、職業となるとまだまだ男性の世界なので、将来野外指導者を目指す女性を応援しちゃいますね。男性だけの社会では解決が難しい課題です。
2 価値、メッセージが不明確、ない
なるほどね。ガイドツアーでも、クライエントは実はこれを求めているのですね。時にはガイド個人の哲学でもいいかもしれませんが、これが教育となると、教師の価値観を押し付けるとそれは宗教になります。野外教育でも、教育のねらいがあって、そこからどのような自然体験を提供し、どのように介入すれば、その教育目標を達成できるか、ようやくわかってもらえる人が増えてきましたが、ガイドの世界でも、単に安全管理だけして、あとは自然体験にお任せでは、質の高いクライエントを獲得できないということです。かねてからガイドにもリーダーシップとティーチングを欠くことはできないと、主張していますが、クライエントからもその必要が迫られる時代に来ています。
1 かっこよくない
最後は、そこかって感じですが、彼女曰く、仕事に対する自信、責任、確固たる信念、ぶれない思考が、全てかっこよさに滲み出るそうです。そうなると、まだ経験の浅い指導者には少々壁が高そうですが、「かっこよく」なる最短ルートは、キャリアスタートする段階から、客観的で、信頼性の高いトレーニングを経て、その後も質の高い仕事を続け、有能なメンターのもとキャリアアップすることが「かっこよく」なる秘訣かもしれません。まだまだ玉石混交、象牙の塔の野外業界において、若者たちが最短で「かっこよく」なれる業界づくりが、市場に価値提供し、新たな参入者を絶やさず、一生続けられる仕事になっていくのでしょうね。
まとめ
以上くり的アウトなガイドをレビューしましたが、彼女の直感が、どれも科学的に説明できることに驚きました。「直感は究極の論理的思考」との持論もありますが、ガイド業、イントラ業が成立しつつある昨今、一方で、多くの方がさまざまなガイドの資質に触れる経験も増えてきています。そこから導き出された直感は、学者が時間をかけ、お金をかけ、多くの研究を統合し、膨大な時間をかけてたどり着いた結論とそんな変わらないということです。ある意味それが99%研究の役割なのでしょう。「かっこいい」というのは、「イケメン」とは違う、包括的な資質を備えたプロフェッショナルを示す言葉になっていくのかもしれませんね。
BE COOL OUTDOOR LEADER!