シンガポールのアウトワードバウンド

なんともうらやましくなるアウトドアセンターですが、これはアウトワード・バウンド・シンガポールの最初にできたウビンアイランドキャンパスです。今回は、第14回ジャパンアウトドアリーダーシップカンファレンスキーノートスピーカーであるスザンナホーさんとともに、OBシンガポールを訪ねましたので、その紹介です。

シンガポール

OBシンガポールのプログラムを理解するためには、まずシンガポールを理解する必要がります。シンガポールはマレー半島の先端にある海峡を挟んだ東西50km、南北25kmほどの島国です。最高峰は163mのブキティマ山で、その周辺の一部の原生林以外は、国土のほとんどが農地や市街地として開発さており、国内でのロングエクスペディションには限界があります。OBシンガポールは本島北西部のウビン島、コニー島、本島南東部のイーストコースの3つのキャンパスがあります。

OBシンガポール

1941年にイギリスのアバードベイにて、OBSが誕生して以降、イギリス以外で最初にOBSができたのは1954年のマレーシアでした(アメリカは1962年のコロラドOBS)。マレーシアでは1957年の戦後の独立を控え、当時のイギリスの統治官僚によって、独立後の国家を担う公務員育成のために開校されました。一方シンガポールでも、1965年のマレーシアからの独立直後、国防省により、兵役につく若者の心身を鍛え、強靭な社会づくりの拠点として、1967年にウビン島に開校しました。その後、2001年にイーストコーストキャンパスができ、そしてこのあと説明する国家戦略として、2026年に世界最大級のOBキャンパスがコニー島に開校されます。国主導でOBができたのが、今日まで発展の続く大きなカギなのかもしれませんね。

アウトドアアドベンチャーエデュケーションマスタープラン

ナショナリズムと強く結びついて発展したOBシンガポールでしたが、より今日的な課題や若者のメンタルヘルスの問題解決として、今日事業がさらに拡大しています。そのきっかけとなったのが、2017年にスザンナの手がけたアウトドアアドベンチャーエデュケーションマスタープランです。この国家戦略では、冒険教育に関する「人材育成」「プログラム開発」「インフラ整備」を3つの柱としています。人材育成としては、野外教育者育成の6ヶ月間のナショナルカリキュラムを策定し、年間40名の野外教育者が輩出されています。プログラム開発の目玉となるのは、15歳を対象とし、2泊3日の遠征を含む5日間の野外教育プログラムです。全国約3-4万人が、複数の学校から、各地のOBSや、国立の野外学習センター、民間の自然学校でこのプログラムに参加します。インフラ整備としては、既存のアウトドアセンターの拡充や、備品の整備、そして最大の目玉はコニー島への新たなOBキャンパスの建設となります。

イーストコーストキャンパス

今回は、本島の南東岸に位置するイーストコーストキャンパスに訪問しました。このキャンパスには、8棟のキャビンがあり、15名1ユニットでキャビンを利用します。キャビンは高床式であり、熱帯特有のスコールの時には、キャビンの下がちょうど良い雨宿りの場所となります。キャンパス内には、OBシンガポールのオハコのジャイアントチャレンジコースが2機あり、各ユニットでローテーションで利用します。

この日は、15歳の5日間(月-金)のコースの1日目で、各グループとも独立して遠征準備をしていました。全15歳を必須としたことで、全ての参加者が遠征に行けるように、キャスター付きのバックパックが開発されたそうです。食料のパッキングに関しては、まだまだLNTが入る余地はありそうです。

周囲を完全に市街地に囲まれたイーストコーストキャンパスでは、周辺の環境的、文化的に特徴的な場所を、2泊3日かけて遠征するプログラムが開発されました。参加者は、ユニットごとに全く独立して動き、指定された数箇所のキャンプサイトを起点に、自分たちで2泊3日のトリップを計画します。この内容を野外遠征か否かという議論よりも、年間に3-4万人の15 才に全てに5日間の野外教育プログラムを提供するための、現実的な工夫と考えるしかないでしょう。ウビンキャンパスでは、島内のジャングルをブッシュウォークしたり、シーカヤックによる遠征があるそうです。

アウトドアアドベンチャーエデュケーションマスタープランにより、OBシンガポールの参加者の95%が15歳となったそうです。この制度が続く限り、世界のOBがうらやむシンガポールであり続けることは間違いないでしょう。

日本の青少年教育施設の再生へ

日本の15歳は、約100万人。国公立の青少年教育施設の数は330施設(文部科学省)、一般的なスペックが200-400名。平均300名とすると収容人数は、330×300=99,000人。15歳100万人を年間50週で割ると、20,000人と余裕で収まります。つまり日本には世界でも類を見ない圧倒的な野外教育インフラがあり、シンガポールのように新たな巨大施設は入りません。プログラムは、街の中を歩かなくても、各施設周辺に豊かな自然環境があります。あとは、2泊3日の野外遠征ができる野外指導者をそろえるだけです。これさえ整えば、国公立の青少年教育施設の再生できます。どうやって?WEAがその答えの一つでしょう。

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