山の食料計画:山の食材の原則

みなさん、普段山にどんな食材を持って行ってますか?コンビニおにぎり?インスタントラーメン?レトルトカレー?確かに短期間の登山であれば、問題は起こらないかもしれませんが、長期登山になると、食材選びの原則を無視すると、うまくいかないことがたくさんあります。今回は山にどんな食材を持っていけばいいのか、その原則原則を紹介します。

1.カロリー
カロリーはと、エネルギーの単位のとで、人が活動するための燃料です。1カロリーは水1gを1℃上げるために必要な熱量です。日常ではだいたい1500キロカロリー毎日必要とします。登山では3000キロカロリー、雪山や高所登山では5000キロカロリーと言われています。まずは、登山日数×参加者人数×必要カロリー/日=山に持っていかなければならない総カロリーを満たしていることが大前提となります。

2.5大栄養素
5大栄養素とは、炭水化物、脂質、タンパク質の3大栄養素+ビタミン、ミネラルを言います。それぞれの栄養素は、運動をしたり、健康を維持するために、とても大切な役割があり(詳しくは5大栄養参照)、山では、炭水化物:脂質:タンパク質=6:2:2の割合で必要です。ビタミン、ミネラルは一般的な食材に含まれているので少量で大丈夫です。まずは、総カロリーに対して、6:2:2の割合で栄養素が含まれていることが前提となります。

3.水分含有量
人間の体重の6割が水で、水は生命を維持していく上で欠くことのできない分子です。一方で、水は、山の持ち物の中でも最も重い持ち物となります。例えばは、おにぎりの重さのほとんどが水分で(炊き方にもよりますが約2.5倍)、お米を持っていけば、その分軽くすみますし、水なら山でいくらでも取れます。また、水分含有量=腐敗しやすさと考えることができます。そのため、山の食材はできる限り水分含有量が少ないものを選びましょう。

4.廃棄率
食べ物には、皮など食べられない部分があります。例えばバナナなどはとてもエネルギー効率の良い食材ですが、バナナをむいて山に持っていくことはできないので、どうしてもバナナの皮はゴミとして持ち帰らなければなりません。例えば同じ栄養価を得るのであれば、バナナチップであれば、ゴミが出ることはありません。山ではできる限りゴミになる部分が少ない食材を選びます。

5.パッキングのしやすや
食材を山に持っていくためにはザックの中に入れないといけません。そのため、パッキングしても壊れたり、漏れたりしないかはとても重要です。例えば卵はタンパク質をとるにはうってつけの食材ですが、山に持っていくとなると至難の技です。山ではパッキングしやすい食材を選びましょう。

6.量(かさ)
山の持ち物は、45リットルとか、60リットのザックの容量の中に全て入れなければなりません。そのため、食料に割り当てられる空間も限られています。量とは同じ栄養価に対して食材が占める空間という意味です。例えば、カップラーメンを持っていくと、カップの中はほとんど空気を運んでいるようなものです。ではインスタントラーメンはどうでしょう。これも麺と麺の間にたくさんの空間があります。例えばストレート乾麺(棒ラーメン)であれば、栄養価も変わらずに、必要最小限の量ですみます。空気でザックがいっぱいになるのは避けたいものです、

7.調理しやすさ
山では調理器具が限られており、電子制御の調理器具なんてありませんよね。そのため、調理が難しい食材はあまり向いていません。例えば、パスを茹でるのは失敗する人はいますか?あまりいませんよね。火加減も適当でほとんど問題ありません。次にお米はどうでしょう?これは火加減や水加減などちょっとしたコツが必要になってきますね。最後に小麦粉?調理中に粉だらけになったり、料理を作るにもかなり知識が必要そうですね。山では同じ栄養価を得るためには、その人のスキルに応じて、失敗の可能性が低いものが良いでしょう。ただし、もしみなさんが調理のスキルがあれば、小麦粉は山の最強食材です。

8.バラエティー
私はカレーライスが大好きですが、毎晩カレーだとさすがにカレーをもう見たくなくなりませんか?山でも毎回同じ食事だと、メンバーの元気もなくなり、せっかくの山がつまらないものになってしまいます。そこで、必要なカロリーを満たすために、炭水化物だったら、お米、パスタ、餅など。タンパク質だったら、スパム、ベーコン、コンビーフ、チーズなど、食材を分けることで、毎回の食事がクリエイティブで、美味しく、楽しいものになります。

9.汎用性
汎用性とは、色々なメニューになるということです。8.バラエティーにつながるところです。先ほど調理しにくい例として小麦粉があがりましたが、例えばお米は、ご飯以外になりません。パスタも、ソースの味を変えるぐらいで、パスタはパスタです。ところが、小麦粉からは、パンケーキ、すいとん、ナン、うどんなど、山でいろいろなメニューを作ることができます。

10.手に入りやすさ
山の代表的な食材として、フリーズドドライがあります。最近ですと、スーパーにも色々な種類のものが並ぶようになりました。ただし、これは都会の話で、山村に行くとニーズがないので、そんなものは手に入りません。「なんだいそれ?」なんて聞かれることもあります。もちろん、事前に都会のスーパーや山の店で購入していくのは、悪いわけではありませんが、普段それしか使わないと、いざというときに食材を調達できなくなってしまいます。

11.費用
これは、大きく個人があると思いますが、私が企業研修などで大人数と長期遠征に行く場合に、食材の単価がちょっとでも高いと、総額として膨大な経費の差になります。山で高級食材でリッチな食事を楽しむのも大好きですが、安価な食材で、高級食材に負けないような美味しい料理を作る方がもっと楽しいです。

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