ニュージーランドLNTレポート

ニュージーランドといえば、アウトドア好きの誰もが憧れる国の一つですよね。私も実は大学院生の時に半年ほどニュージーランドに留学していました。

実はニュージーランドは、世界で初めて、アメリカで生まれたLNTの国際ブランチを立ち上げた国なのです(2003年)。その後、LNTは、正規に国際ブランチ規定を作成し、NZはこの規定に基づくに国際ブランチになるという選択はしませんでしたが、これから国際ブランチを目指す日本として、先進国の取り組みを2019年12月に調べてきました。


目次

ニュージーランドのアウトドア産業
ニュージランドのLNT
キウィのLNT感覚
ニュージーランドから学ぶこと


ニュージーランドのアウトドア産業

アウトドア大国ニュージーランドのアウトドア産業の規模はどのくらいでしょうか?

まずイメージしやすいように、NZの国の規模を確認しておきましょう。日本は、国土が37万km2、人口1.3億人で、GDP4.8兆USD。それに対して、NZは面積が27万km2、人口500万人、GDPは2000億USD。なので、日本から岐阜県(岐阜県の方、ごめんなさい。ちょうど1km2だったので)を引いたぐらいの国土で、人口、経済規模とも4%ぐらいと言ったところでしょうか?なんかこれだけでも、幸せって感じですよね。

さて、問題のアウトドア産業ですが、ニュージーランドの文化遺産省(この省の名前がカッコ良し)の調べでは、7.42億NZD(5億USD)で、GDPの約0.25%ぐらい。

これに対して今絶好調の日本もアウトド産業は約10倍の5000億円(48億USD)と言われいます。GDPの0.1%。

私は、経済に弱いので、これをどう解釈したら良いかわかりませんが、2.5倍ぐらいアウトドア産業が盛んといえませんかね?どうかな?

ただ、日本との違いはアウトドア産業の消費者の多くがインバウンドということです。この点、NZと同じように豊かな自然があり、これからますますインバウンドのビジネスが活況になるであろう日本にも、伸びしろは十分にありそうですね。

経済的な解釈はともかく、実際に1993年の留学時の状況ですが、アメリカの国立公園のように、観光地では至る所にアウトドアツアーの業者があり、当時の日本の国立公園から比べると目からウロコの、ザッツ、アウトドアインダストリーって感じでした。

また、野外教育という点でも、アウトワードバウンドNZも、アメリアとほぼ同時期の1962年にはできていて、長い歴史があります。私はOBNZには行けなかったのですが、そこらかスピンアウトした、Outdoor Adventure Instituteというとこに行って、これがOBSかあって(OBSではないのですが、コンセプトはほとんど同じだそうでした)、初めて目の当たりにしたのを覚えています。

ですので、噂に違わず、豊かな自然を生かして発展したアウトドア産業には長い歴史があり、今も世界中の人を魅了しているといえますね(薄っぺらくまとめてみました)。


ニュージランドのLNT

LNTJの立ち上げに向け動き出したところで、前々から初めてLNTを導入したNZが気になっていたので、もともとNZに行きたがっていた母を誘って、家族旅行もかねて、2019年12月にLNT_NZを訪問しました。

本部は南島クライストチャーチにあるのですが、今回北島しか行く時間がなかったので、北島の観光地であるロトルアに事務所を置く、CFOのゲイル・ニューマンさんに色々お話を伺いました。

NZでは、2000年にはいり、インバウンドのツーリストが劇的に増加したそうです。その結果、アウトドア観光地の多い南島で、観光による環境ダメージが深刻化し、環境保全省と連携してスタートしました。ちなみにゲイルは、環境保全省の外郭団体の農業と環境保全の活動をする団体の職員でした。やはり行政との連携は不可欠。

団体の規模としては、びっくりしたのですが、予算規模が50万円。少な。そのうち20万円が寄付金で、寄付元はロータリークラブと、カトマンズというNZのアウトドアブランド。それ以外が主に会費。確かにこれでは、アメリカのLNTに正式な国際ブランチとしてのロイヤリティーは支払いませんね。

一方で、アクティビティは、本当に成功していて、各種アウトドアガイドのカリキュラムには、LNTが含まれていて、その定着率は100%ということでした。彼らは特にLNTを指導しているわけではないので、LNT_NZのメンバーシップというわけではありませんでした。LNTのシステムから予測すると、おそらく各統括団体の講師陣がLNTの資格を維持しているのではないでしょうか。日本でも普及が目的なので、柔軟に考えていきたいですね。

ちなみに、当たり前といえばあたり前ですが、野外救急法の取得率も100% です。さらに、めちゃくちゃNZオリジナルのプロバイダーが多い。アウトドア観光が盛んな街ごとにプロバイダーがあるようです。こちらのナショナルスタンダードなども改めて調べてみたいところですね。

LNTコースの開催は、2019年には民間では行われおらず、オタゴ大学、ケンタブリッジ大学と言った野外の専攻がある大学の2コースのみでした。特にオタゴ大学は、野外指導者養成に力を入れており、LNTを含めて充実した野外のカリキュラムがあるそうです。日本でも、大学でLNTコースを開催できる人材は育っているので、野外の学生がLNTを理解して業界に入る時代が早く来るといいですね。

LNT_NZは、あまりメンバーシップにこだわらず、LNTをアウトドドア産業、自然公園管理に普及したいという純粋な思いが伝わってきました。日本でも、この思いを大切にしつつ、どうビジネスとして成立させていくのか、ビッグチャレンジになりそうです。


キウィのLNT感覚

NZでは、LNT訪問だけではなく、母親の目的は、以前息子が実家にホームステイしていた家族と再会することでした。牧場の経営者で、私も留学中にお邪魔したことがあるので、懐かしい出会いとなりました。

コーレイさんは、ロータリアンで、生活レベルは上流階級と言えるかもしれません。私がかつて訪れた牧場を息子に譲り、今は下のオトロワンガという街の郊外で悠々自適の生活です。

今回、LNTについて調査にきたことを話すと、当たり前にように知っていました。もちろん英語としての意味だけでも理解できるし、長年牧場を経営していたこともあるのか、アウトドア産業と全く関係のない方でも、LNTが意味するコンセプトは理解していました。

ただ、これは文化なのだと思いますが、食べカスは自然に庭の芝生の上に捨てていました。するとファンテイルというとてもキレイな鳥が来て、それを啄んでいく。LNT6なんて考える気にもならないほど、美しくし、気持ちの良い光景でした。

LNTのゴールは持続可能性です。日本で里山をフィールドにしている方々は、これまで密接に自然と関わり生活をしてきたわけですから、LNTをルールと考えずに、持続可能性を前提に、その土地、その団体なりのちょうど「いい加減」を、大切にしていって欲しいですね。

日本では、買い物袋の有料化が2020年7月から始まりましたが、NZでは、ちょうどう1年早い2019年7月から、買い物袋が「禁止」になりました。つまり「Plastic bag, please.」と言っても「No」です。当時、日本の有料化の前だったので、NZやるなあっと感心しました。ただ、紙袋はタダったので、それってパルプだよねって考えると、その辺りがNZのいい塩梅なのでしょうか。

一方で、25年たっても、未だにゴミの分別は、あまり厳密ではありません。1993年では、巨大なクラフト袋に、生ゴミも、不燃物も、とにかくなんでも入れて、巨大なホチキスで口を閉じで、ごみ収集日に道端に出すと言ったやり方でしたが、今では、巨大なクラフト袋が、ポリのゴミ箱に変わっただけで、基本なんでも捨てていました。もしかしたら大きな街ではもう変わってるのかもしれませんが、こればかりは、ゴミ処理行政の問題もあるので、個人レベルではどうにもなりませんね。


ニュージーランドから学ぶこと

ニュージーランドでのLNTでの浸透率に反して、LNT_NZはボランティアで運営されていました。後発の国が新たに国際ブランチになるためには、ブランチ規定に下側なければならないため、同じ事業規模では不可能です。

ただ、どうしてLNTをNZに導入したのか、英語圏でありながら、なぜブランチを立ち上げたのかのミッションを、純粋に果そうとするメンバーのパッションが伝わってきました。

アメリカのLNTは、企業スポンサーから2億円と、完全にビジネスとして成功するスキームが出来上がっています。

LNTJもUSからビジネススキームたくさんを学びつつ、NZのミッション-オリエンテッドの気持ちは外さずにいきたいですね。


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