今日のUS及びカナダの一部の野外救急プロバイダーは、Scope of Practice: SOP(野外救急実践ガイドライン)に批准することによって、資格のトランスファーが可能になっています。SOPには各プロバイダーがWFA/WFRのカリキュラムで最低限満たさなければならない基準が示されており、この基準を満たした上で、各団体の、教育法、コースデザイン、特別な環境への特化など、独自性を発揮しています。
アメリカでかねてより、フィールドでのメンタルヘルスの問題に対する対応がウィルダネスリスクマネジメントで注目されおり、以前参加したウィルダネス・リスクマネジメント・カンファレンスで、メンタルヘルスに特化し野外救急プロバイダーのワークショップがあり、驚かされたことを覚えています。
そして、その驚きがとうとう現実のものとなりました。2022年より、SOPの基準の中にメンタルヘルスに関する問題が導入されることとなったのです。これにより各プロバイダーは、そのボリュームは団体ごとに個性があるにしろ、必ずメンタルヘルスの評価と処置を取り扱わなけらばならなくなったのです。
私のような野外教育者は、ある意味、参加者にストレスを与え、そのコーピングを支援することにより、自己成長を促したり、時にはメンタルに問題を抱えている参加者を受け入れて、その解決を業としますが、ガイドの方々のように、参加者の変化を保証する必要のない業では、このようなガイドラインは、ガイド自身や他のクライエントを守るためにも必要かもしれませんね。一方我々野外教育者も、もちろんその改善にあたりますが、我々は臨床心理士ではないので、自分の力量を過信せず、あきらめるべき判断基準として必要かもしれません。
今回は、WMTCの示す、メンタルヘルスの評価、処置、避難レベルについて紹介します。
特性
野外遠征は、心理的なストレスがあり、心理的な健康問題のきっかけになることがある。
通常、軽度のストレスであれば、素早くコーピングすることができる。中度から重度のストレスは、コーピングの限界を超え、危機の原因ともなる。
野外指導者は、どのようなコーピング過程にいるのか評価し、必要となるサポートを施し、必要に応じて専門家の診断を受けるために避難を開始する必要がある。
メンタルヘルスの評価レベル
メンタルヘルスのS/Sx
以下はストレスを受けているS/Sxである。コーピングの支援を行う。
・集団の会話、意思決定に参加しない
・メンバーとの人間関係の形成、活動参加に興味がない
・可能な時は一人になりたがる
・グループメンバーから避けられる
・定期的に不安、おびえが現れる
・すぐに怒ったり、不適切な批判をする
・会話が散漫で、不自然にゆっくり、もしくはとりとめなく話す
・悲しさ、不幸せを訴え、突然泣き出す
・食欲がない、もしくは食べすぎる
・他のメンバーが異常であると押し付ける
・日々の行動を突然、予期せず変える
・妨害的な行為
・不自然な心理状態
・メンバー、スタッフと葛藤状態が続く
・理性を欠いた行動が続く
・原因のわからない身体的問題を訴え続ける
・日々の課題や活動に参加することができない
処置
傷病者が、ストレスを受けても、コーピングする意思がある場合、適切な支援のもと野外に残ることができる。安全な環境を維持する。
・傷病者の話に注意深く耳を傾け、関心を寄せる。
・問題解決、自己ケアに努める。
・傷病者とスタッフ、メンバーとの関係性を強める、
・段階的に活動を再開させる。
避難
以下の状態があった場合、傷病者は避難させ、メンタルヘルスの専門家を受診する。避難中も注意深く観察する。
・野外スタッフ、もしくは医務担当者が、傷病者の状況を受け入れ堅いとき。
・傷病者の行為が他のメンバーに悪影響を与えるとき。
・傷病者が精神的な薬を処方され、それを服用しなかったとき
・傷病者が自分やメンバーを傷つける可能性があるとき
・傷病者がスタッフやメンバーに自殺をほのめかすとき。
まとめ
子供のキャンプをやっていると、S/Sxなんでよくあることですよね。私のキャンプでもカウンセラーたちに毎日問題行動の観察、記録、報告を行わせ、翌日の対応を話し合うのですが、こういった基準があると、カウンセラーたちも観察しやすですよね。
処置に関しては、こんな単純な対応ではうまくいかない時もあるので、WEAカリキュラムの「クライシスマネジメント」が役に立ちそうでから、参考にしてください。
ブログのカテゴリに新たに心理を付け加える日が来てしまいました。
より詳しくファーストエイドを理解するためにはデジタルハンドブックを参照してくだい。また、それらの知識を正しく活用するためにはWFA/WFRコースに参加してトレーニングを受ける必要があります。
楽しい夏のアウトドアトリップは、良い食料計画と、正しい熱中症予防から。