一次救命処置

ASRの対応

神経系は、随意神経(体性神経)と不随意神経(自律神経)に分類される。随意神経は、感覚神経と運動神経に分かれる。感覚神経は、脊髄、脳に信号を送るのに対し、運動神経は、それから信号を送る。これらの神経を通じて、随意神経は骨格筋を収縮させ、意図的な動きを作る。一方不随意神経は、平滑筋を収縮させ、ホルモンを調整し、ホメオスタシスを維持する。ほとんどの不随意神経は意識によって統制できない。不随意神経はさらに、交感神経と副交感神経に分類される。交感神経は、細胞や器官のエフェクターを刺激し、副交感神経はそれを妨げる。いずれの神経も、同じエフェクターに刺激を与え、相互に作用する。通常は、交感神経は体を覚醒させ、副交感神経は睡眠や消化を司る。 外傷によるストレスにより、不随意神経が不自然な信号を送ることがあり。これは急性ストレス反応(Acute Stress Reaction: ASR)という。交感神経が高まれば、体は「戦う」、「逃げる」の判断をし、虹彩が広がり、心拍、呼吸、血圧が上がり、強度の運動に備える。同時に、不安や緊張を高め、発汗し、血管収縮により、皮膚は青白く、冷たく、しっとりし、エンドルフィンの放出により、痛みがわからなくなる。過度の刺激により、筋収縮が統制できず震えが起こる。交感神経が過度に高ぶると、認知能力を下げ、複雑な情報を処理できなくなり、恐怖に対する感覚が麻痺する。そのため、交感神経系のASRでは、痛みに気づかずに、不自然なS/Sxを示す。バイタルサインは、ボリュームシックと類似しており、それをわからなくする可能性がある。 一方、副交感神経の刺激が優位になると、傷病者は、吐き気、めまい、時には気を失う。血流が消化器に集中し、心拍、呼吸、血圧が低下する。皮膚は青白く、冷たくなる。意識がある傷病者は、混乱する。副交感神経のASRは、脳震盪のS/Sxと類似しており、頭部への外傷の評価を難しくする。 重大な事故は、傷病者、救助者、看病者、バイスタンダーに急性、もしくは恒久的なストレスを与える。心的外傷後ストレス傷害(Post Traumatic Stress Disorders: PTSD)は、個人差があるが、一般的によく知られている。救助者、看病者としてのあなたの行動により、傷病者のストレスを短期的にも長期的にも軽減できる。(Psychological First Aid: PFA)とは、PTSDの予防、低減のために、近年注目されている技術である。用語自体は新しいが、傷病者の心的ストレスの低減は、PASの不可欠な部分として考えられてきた。 現場の脅威をできる限り緩和し、傷病者、救助者、看病者、バイスタンダーにとって、安全な環境を作る。救助者がやるべきこと、できることを集中するために、傷病者、看病者、バイスタンダーに真実を伝えることは不可欠である。時には、その場に不適切な人を、現場から離すことも必要である。 ストレスは、傷病者だけでなく、救助者にも発生する。救助者は、救助を開始する前に、自分のASRを低減する必要がある。現実に焦点を向け、できる限り冷静に対応する。PAS通りに進め、よく体系化されたSOAPノートに基づいてひちつずつ進めることは、ASRの低減に役立つ。 傷病者や救助者にとって、無力感や絶望感は容易に起こる。看病者は、傷病者を自分の処置や避難に目を向かせる。現場のリーダーは、救助者、看病者、バイスタンダーを励まし、現場でできることを、ひとつずつクリアしていく。 現場のリーダーは、看病者に傷病者と共に、評価、処置、避難に関与することで、現場の人間関係を構築する。看病者と傷病者の人間関係は、傷病者のライフラインにとって現実的に重要な要因である。また、傷病者やバイスタンダーが、家族や友達、恋人などの大切な人と連絡を支援することで、現場の枠を超えてライフラインを構築することができる。 Author: Paul…

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野外でのCPR

心肺蘇生(Cardiopulmonary Resuscitation: CPR)と、心脳蘇生(Cardiocerebrial Resuscitation: CCR)は、応急処置の技術として重要であり、全ての人が身につけるべきである。ただしその効果は、野外状況では限界がある。いずれの技術も、脳死を遅らせ、蘇生の可能性を伸ばすが、CPRは、胸骨圧迫と人工呼吸を合わせて行うのに対し、CCRは、胸骨圧迫のみを行う。血液循環を開始するための十分な胸腔内圧を得るためには、おおよそ10-12回の胸骨圧迫が必要である。血液循環のための胸腔内圧は、少量の新鮮な空気と酸素の供給にもなる。もし肺に空気と酸素が残っている場合(例えば心筋梗塞による心停止など)、胸骨圧迫だけの方が、人工呼吸と組み合わせた場合よりも、胸腔内圧を維持しているために、脳死を遅らせることができる。それに対し、CPRは、呼吸停止や酸欠により心停止した傷病者(例えば溺れ、落雷、雪崩など)には、CCRより有効である。いずれの技術も、時間とともにその効果は下がり、20分以上拍動が再開しなければ蘇生の可能性はない。保守的に考え、30分で蘇生しなければCPRを中止する。また、↑ICP、肺損傷、ボリュームショックなどの外傷により心停止した傷病者は、CPR、CCRとも効果がない。 CPR、CCRが効果的に行われるためには、主要3器官系に損傷がなく、体温が32度以上である必要がある。胸骨圧迫は、胸骨の下3分の1の場所に、救助者の体重を乗せ、正確に早く(100回/分)行われなければならない。圧迫の間に、完全に胸骨が反動で戻るように、圧を解放する。圧迫を反動は圧迫と同じくらい重要である。人工呼吸は、傷病者の胸部が上がるまでしっかり吹き込む。吹き込みすぎると、胃に空気が入り、吐瀉物の可能性を高める。これらの技術を正確に行わなければ、蘇生は困難となる。 心室細動、二次救命処置が必要、病院への緊急搬送が不可能、多くの心停止者がいる場合、蘇生は不可能である。救助者は、CPR、CCRの限界を理解し、いつ開始し、いつ止めるかを心得る。 より詳しい情報はデジタルハンドブックを参照し、正しい技術を身につけるためにはWFA/WFRコースに参加し、評価と処置をSOAPノートに記録する。 Author: Paul Nicolazzo/ Translator: Taito Okamura

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