コロナ禍での花山キャンプも今年で3年目になりました。元々は、コロナ対策で始めたことですが、よくよく考えてみると、こっちの方が自然だし、LNTの原理から考えても、もっと早くから導入すべきだった、コロナ禍で大反省した野外炊事のシステムを3つ紹介します。
目次
1かまどを使わない
2流し場は水を汲むだけ
3ゴミ箱の徹去
4おまけ:アメリカの国立公園のキャンピンググランド
1かまどを使わない
花山キャンプ場のスペックは、伝統的な教育キャンプ場として作られたので、共同のカマドがあります。これまでは、全ての班がこのカマドで野外炊事をしていました。ですので、食事作りの時はまあまあの人混み。おそらく、多くの教育キャンプ場は同じ状態だったのではないでしょうか?
コロナ禍における3密回避のガイドラインとして、自分達のテントサイトに土を掘ってカマドを作り、班と班の接触をできる限り避ける方法をとりました。これまでも、中高生は勝手に自分達でカマドを作って、夜のティータイムなどをしていましたが、全コースともカマドの利用をやめたのはコロナ禍が初めてでした。
ところが、このやり方をとったところ、これまで、共同カマドの周辺では、カウンセラーは1人で、カマドの外でナタを使うキャンパー、中で火を使うキャンパー、テントサイトで野菜を切るキャンパーを全部見なければならなかったのですが、カマドをテントサイトにしたことで、班員全員の作業を手の内で観察できるようになりました。しかもカウンセラーもキャンプテーブルに座りながら快適だし。
もう一つ、小学校低学年でも、カマド作り、日々の焚き火、カマドの片付けの過程で、自然とLNT5焚き火の最小限の影響を理解する機会にもなりました。コンクリートのカマドで山火事への注意や、土壌への影響を理解するチャンスはありません。不便であればあるほど、何もなければないほど、スキルは上がるし、体験の質も高まります。
2流し場は水を汲むだけ
花山キャンプのキャンパー用の水道は、カマドのある共有スペースにありるため、カマドの混雑にさらに拍車をかけていました。
コロナ1年目は、ポリタンクに水を汲んで、テントサイトに設置し、その水で煮炊きをし、洗い物まで、LNTテクニックで、テントサイトで行っていました。水場に行くときは、ポリたんの水を汲みにいく時だけ。ですので、テントサイトで、みんな歯磨き粉をスプレーッドするもの覚えました。
その結果、当然のことながら、流し場は常にキレイ。生ごみが溜まることもなし。元々花山キャンプでは、洗い物を流すときにストレーナーを通す習慣はありましたが、それでも食器を洗った水を流せば、少しは汚くなりますよね。
コロナ2年目からは、流石に小学校低学年には難しいよねということで、ポリタンクはやめましたが、流し場をキレイな状態は保とうということで、「流し場は山の水場と一緒」という考えを徹底しました。登山中に沢から水を取るのは水筒だし、汚れたものを沢で洗わないのもキャンパーはすでに身についています。登山中と全く一緒に、流し場を山の水場だと思って使うことにしました。
まず調理の時は、鍋や飯盒を流しに持っていくのではなく、自分の水筒に水を汲んでテントサイトで鍋や飯盒に水を入れました。これにより、お米を研ぐときにたまに米が流しに流れてしまうようなこともことも起こりません。
片付けの時は、まずテントサイトで、スクレーパー、その後に新聞紙。汚れを拭き取った新聞紙は、そのままカマドにポイ。ここまですると、見た目はほとんどキレイ。そして最後に、流し場でヤシのみ洗剤でキレイにする(あっ、もちろん山ではやりませんよ)。こうすることにより、これまでより格段に流し場をキレイに保つことができました。
3ゴミ箱の撤去
これまで、流し場が炊事の中心だったので、生ごみ、紙ビニールごみ、缶ビンと、流し場に3つの分別用のゴミ箱を置いていました。ところが、炊事の中心がテントサイトになったことにより、逆にゴミを流し場まで持っていくことの方が不自然で、食料を配る時の食配カゴに分別をして、本部に戻すシステムにしました。
これまで、流し場の横にあった90リットルのゴミ箱に、何も考えずに生ごみを捨てていましたが、自分達で食事が終わるまで管理するとなると、できるかぎり生ごみを少なくしようと、調理に無駄なく使うようになりました。
また、紙とビニールは一緒のゴミ箱だったところ、紙は燃やす、ビニールは燃やさずに本部に下ろすなど、小学校低学年からゴミの質の違いを理解できるようになりました。
もう一つ、これは散々自分でLNT6野生動物の尊重と言いながら、できてなかったなあという反省ですが、流しに生ごみのゴミ箱を置くのって、そもそも野生動物にとってどうなのってことです。現実的に、過去、タヌキやカラスにやられたりしていました。その防止のためにゴミ箱の蓋に石を置いてきましたが、そんな石、もしクマだったらと考えると。
コロナ3年目の今年、キャンプ場本部の壁の内側にできたニホンミツバチの巣を狙って、クマに本部の壁がガッツリやられました。これまで、クマはいるよと言いつつも、実感のなかったキャンパーも、本部の壁について生々しいクマの爪の跡をみると、自分達はクマのすむところなんだと否が応でも実感します。そんなクマが、カウンセラーのいない夜に(いてもどうにもなりませんが)、生ごみの匂いで、カマドやテントサイトに来たらどうするって言うと、キャンパー達は米粒ひとつ残さずに、流しやテントサイトの生ごみをキレイにします。
ゴミ箱撤去により、ゴミを出さない、ゴミの質を理解できる、生ごみを自然に絶対残さないキャンパーへと変わりました。
4おまけ:アメリカの国立公園のキャンピンググランド
きっかけがコロナ禍でしたが、よくよく考えてみると、自分はアメリカの国立公園のシステムも知っていたし、LNTも理解していたのに、なんで今までこのシステムでやらなかったのだろうと、深く反省しました。カウンセラーの負担軽減や、キャンパーの体験の質のために、かつての花山キャンプのやり方をしている指導者の方は、直ちに見直しを勧めます。
アメリカの国立公園は、連邦政府直轄の管理のため、どこもキャンピンググランドのスペックが大体共通しています。また国立公園だけでなく、ナショナルフォレスト、ウィルダネスエリアにあるキャンピンググランドも大体同じスペックです。
まずキャンピンググランド全体で言えることは以下の通り。
1)トイレは大体ある。シャワーもたまにある。
2)共同の流し場がない
3)共同のカマドがない
3)ゴミ箱がない
4)残炭捨て場がない
5)ベアコンテナがある(ベアカントリー)
一方、それぞれのキャンプサイトの特徴は。
1)それぞれのテントサイトが地形、林間でアイソレイトされている
2)車でテントサイトまでいける
3)キャンプテーブルがある
4)ファイヤーサークルおよびグリルがある
5)水道があるが、下水処理の仕組みはない
この2つから見えてくることは、ゴミは当然持ち帰り、野生動物への配慮は当たり前と言うことです。一方、疑問になるのが、汚れた食器の片付けや、焚き火の処理です。日本だとキャンプ場指定の共同の流し場で食器を洗い、残炭は残炭捨て場にといったところでしょうか?実はこの2つキャンプ場のシステムが、日本人のキャンプスキルを未熟にし、キャンプ場管理者の負担を増やす、日本ならでは諸悪の根源なのです。
本来であればインパクトはスプレッドのはずですが、あえて流し場に集中させる。もちろんそれは下水システムがあるからそうしているのでしょうが、その下水ってその先どうなってるか理解していますか?合併浄化槽がある施設はまだまだ少なく、ほとんどが自然に垂れ流しです。また、家庭のシンクで洗うように、キャンプ場の流し場でも洗うので、生ごみ、油汚れで、排水溝はすぐに目詰まり。この掃除を好んで行うキャンプ場スタッフはいないでしょう。
次に残炭ですが、残炭が分解されないのは、この記事を読んでいる読者の方がはすでにご理解のはず。その結果、溜まりに溜まった残炭は、産業廃棄物として、高額な処理代を支払い、専門の業者に引き取ってもらわなければなりません。ところが、本当に全てのキャンプ場がそうしていると思いますか?実は、穴を掘って埋めたり、林間に不法投棄しているのが現実です。私のいた大学では、炭は堂々と穴を掘って埋めると野外専門の学生に指導していました。
共同のカマドがあるから、次に使う人のことも考えて、キレイにしましょうねと言う日本人的美意識と偽善が融合して、人の見ていないところでの不法投棄や、炭は土に還るという非科学的な、お粗末な焚き火文化を生んできました。
残炭は、もちろん全て灰にすることを前提に、残ってしまっても、テントサイトにあるファイヤーサークルにそのまま残しておけばいいのです。そうすれば、次に来たキャンパーがまたそこで焚き火をし、残炭を灰にしてくれます。次のキャンパーもすぐに火がつく残炭が残っていたらラッキーラッキーです。
食器の洗い方にしろ、焚き火の片付けにしろ、アメリカのキャンピンググランドは、LNTのテクニックが前提となるスペックとなっています。逆にそのテクニックがないと、「どこで食器洗えばいいですか?」「残炭どこに持っていったらいいんでしょか?」なんて質問が日本人ビジターからは出てきそうです。それならまだしも、食器をトイレの洗面所で洗ったり、残炭を土に埋めたりしている人はいませんよね。
日本のキャンプ場で、できてしまった施設をすぐに壊すこととはできませんが、今回花山キャンプで大反省したように、LNTの原理に基づいて同じ施設でもより良い方法に進化していくことはできるはずです。そして新たにできるキャンプ場には、日本のキャンプの負の遺産を繰り返さないエシカルとロジカルなディシジョンを期待したいものです。
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