アメリカの組織キャンプを勉強していくと、YM&W、B&Gと並び、その歴史に中に必ず出てくる4Hキャンプ。4大キャンプ団体は、日本にもあり、アメリカでもキャンプ場などを訪れる機会がありましたが、4Hは農業青年から始まった???としか理解しておらず、その実態に触れることはありませんでした。
今回、WEAのカンファレンスで訪れたアーカンソー州の州都リトルロックには、アメリカの最大級の4Hキャンプがあるので、見た方がいいと、クリスキャッシェルに勧められ、WEAメンバーのコネを使って、アーカンソー4Hセンターを訪問しました。
4Hは、Head、Hart、Health、Handの4つのHを由来としています。まさに、頭と心と体と手?Handは「手」ではなく、ハンズオンエクスペリエンスを意味しています。ご多分にもれず、1900年代初頭に、青少年の農作業や家事のスキルの向上を目的にしたクラブから発展しています。確かに、今回のセンターも、アーカンソー大学の農学部がスポンサーとなっています。今日では、全米にセンターや、キャンプ場、大学にも4Hの卒業生が集まる4Hクラブなどがあり、メンバーが650万人とか。4Hセンターを訪れてたことをfacebookにアップしたら、早速WEAの仲間から、「私も4H出身よ」なんてコメントがありました。
全体像
アメリカの伝統的な組織キャンプ場は、メインの管理棟があって、その周りに、利用団体ごとに子供たちに泊まるキャビンのビレッジがあり、その中心にダイニングホールがあるという構成です。
今回の4Hで驚いたのは、子供ちが泊まるキャビンがなく、スペックまさに日本の自然の家でした。もちろん全米全てかどうかはわかりませんが、今回に関しては、収容人数500ですので、ちょうど国立の施設ぐらいでしょうか?その広大な敷地の中に、チャレンジコースや環境学習の施設が点在するといった感じです。広さを聞いたらボーダーはないとのことでしたの、御駒山あり、砥沢ありの国立花山青少年自然の家といったイメージでしょうか?
チャレンジコースは、1996年に建設したとのことでした。業者を入れず独自に建設し(手作り感満載)、ACCTの公認を受けるといったシステムです。1997年の日本野外教育学会の設立総会で講演したベティーによれば、当時80%以上の組織キャンプ場にチャレンジコースがあるとのことでしたので、ちょうど1990年代が建設ラッシュだったのでしょうか?環境学習の小屋は、自然誌に関する展示物や教材があるなど、他の一般的な組織キャンプのスペックが揃っていました。
LNTトレイル
今回、「いいね👍」と思ったのが、LNTトレイルです。ハーフマイル(800m)のトレイルを歩いて帰ってくると、7原則が学べるというプログラムでした。これ、即日本の自然に家で使えますよね。現在、国立花山青少年自然の家と国立山口徳知青少年自然の家が、LNTJの団体メンバーになっていただいており、さらには、この3月には、福岡県下の全青少年教育施設の職員を対象にトレーナーコースをやるので、即紹介したいと思います。今回は、7原則のプログラムのタイトルだけ紹介します。LNT指導者のみなさんは、マニュアルを欲しがらずに、自分で作ってみましょうね。
原則1 Are You Ready(準備はいいかい?)それっぽい
原則2 Surface Hopscotch(石蹴り遊び)中身知りたいですよね
原則3 Trash Timeline(ゴミの一生)お馴染みですね
原則4 Leaf What You Find(見たものはそのままに)そのまんまやけんけ
原則5 Moundfire Mania(マウンドファイヤーマニア)ふむふむ
原則6 UnBEARable(熊ができないこと)面白そう!
原則7 Moment of Silence(静寂の時)トレイルのオチにもなりそう
ハイアドベンチャー
そして今回、いって本当によかったなあと思ったのが、このハイアドベンチャープログラムです。このプログラムは、アーカンソー州外の国立公園やウィルダネスエリアに、1週間以上かけて遠征にいくというプログラムです。これまでの組織キャンプ場では、近くの山へのハイキングはありましたが、これだけしっかりした野外遠征をやっている組織キャンプは初めてです。ベースキャンプで、チームビルディングをして、LNTを学んで、野外遠征にいくなんて、都市とウィルダネスがめちゃくちゃ近くにある我が国において、私の考える日本型の野外教育がここにあったなんてって感じです。いずれも移動には2日がかり。日本のバスで数時間なて可愛いもんです。以下いくつか遠征先と簡単な内容を紹介します。
ペコスウィルダネスエリア(NM):高山でのハイキングとホースバックライディングのトリップです。指導者を含めた参加者は12名で、これは公園の規定による人数制限とのことでした。いずれのツアーも、春に保護者も参加するトレーニングキャンプ1日、キャンパーのみ参加するトレーニングキャンプ2日を行い、8月第1週に遠征に出かけます。遠征は4泊5日ですが、前後の移動で8泊9日のプログラムです。
バウンダリーウォーターズ(MN):アメリカとカナダの国境に位置する水域でのカヌートリップです。こちらも公園の規制により、指導者を含めた9名が最大催行です。同様に春にトレーニングキャンプを行い、キャンプ場の池で、カヌーのパドリング、セルフレスキューなどを行います。日程も同様に現地5日、移動を含め9日のプログラムです。
ダニエルブーンナショナルフォレスト(KY):ハイアドベンチャープログラムは、原則ハイキング&ホースバックライディングと、カヌートリップを毎年交互に行います。ケンタッキー州のこのエリアは、8月は高温になるため、6月末に実施されます。移動距離が若干短いため、現地5日、移動を合わせて8日間のプログラムです。
まとめ
自然の中に突如鉄筋コンクリートでそびえ立ち、学校にいる時よりも人口密度が多い、日本の自然の家は、時として「青少年不自然の家」なんて揶揄されることもありますが、アメリカだってあるじゃないですか。ただそこには、周辺の自然環境をフルに活用し、新旧いいものをどんどん取り入れ、高度にトレーニングを積んだスタッフによって指導され、今もなお色あせない伝統の姿がありました。
特に今日の自然に家に欠落しており、簡単には導入不可能なものが、ウィルダネストリップです。アメリカでは、大学におけるアウトドアリーダーシップの授業では一般的で、そのための公認システムとしてWEAがあるのですが、組織キャンプで子供たちに提供するのは、聞いたことがありませんでした。
花山キャンプでは、小学校4年生から、宿泊登山が始まり、中高生になると、LODシステムで、3泊4日とかの野外遠征を導入しています。そんなの普通のキャンプでできるはずがない、時には無謀、事故がたまたま起こらなかっただけなど、勝手にやってくださいなって感じですが、4Hではそれが一般化してました。
国内で展開するためには、そもそものキャンプ日程の長期化、野外スタッフのアウトドアリーダーシップスキルの獲得、WFR・LNT資格の義務化、社会の安全意識の変化など、いろいろな課題はありますが、これだけ都市とウィルダネスが近く、さらに自然の家なんて、ウィルダネスの入り口に特別に建設されているわけですから、このリソースを生かさない手はありません。
その教育手法を理解してもらうために、野外救急だけではなく、LNTでもなく、やっぱりWEAの普及が肝になるなあと改めて感じました。
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