アイルランドのLNT

アメリカにいるのになんでアイルランドと思われるかもしれませんが、現在アメリカで行われているWEAカンファレンスとそれに続くWEAコースに参加する森本リカさん(ひの社教ボランティアリーダー)は、現在アイルランドにワーホリ留学中で、世界で最もLNTが成功しているという国を肌で感じているそうですので、リカさんの興奮を元にレポートします。

目次

・国の機関との連携
・回りまくるソーシャルメディア
・生活に浸透するLNT

国の機関との連携

アメリカのLNTは、森林局、国立公園局、土地管理局、魚類野生動物局など、すべて連邦政府直轄の機関から始まったため、これらの機関とLNTは連携覚書を交わし、国有地にはほぼ100%LNTが導入されています。

一方、アイルランではどうでしょうか?1990年代まで、アイルランドでは、豊かな自然、農村を守るために、さまざまな組織が、さまざまな基準を設けていました。ちょうど今の日本みたいですね。その後、農村のレクリエーション活用、農村利用のナショナルコードの必要性が問題となり、農村地域開発局による農村コードの合意により、これらが大きく前進しました。

2004年に、農村コードをさらに、アウトドアレクリエーションの普遍的なコードに発展させるために、以下の政府機関、全国組織が協議し、国際的に認知されているLNTが最良であると判断し、2008年に、LNTアイルランドが設立しました。

・the Countryside Access and Activities Network(農村アクセス・活動ネットワーク)
・Duke of Edinburgh Award Scheme(エジンバラアワード)
・Coillte(アイルランドの最大面積の森を管理する林業会社)
・National Parks and Wildlife Service(国立公園・野生動物局)
・Forest Service (森林局)
・Heritage Council(遺産評議会)
・Irish Uplands Forum(アイルランド高原協議会)
・Mountaineering Council of Ireland(アイルランド登山協議会)
・Mountain Meitheal(旅行、ツアーの展示会業者)
・Scouting Ireland(アイルランドスカウト)
・The Presidents Award(大統領アワード)

この当初の丁寧な連携と議論のおかげで、全ての組織が納得してLNTを推進できる国となったのですね。そう考えるとLNTJは、理事の人選には自信を持っていますし、設立はWEAからの必然だったかもしれませんが、少々勢い任せだったところもあるかもしれません。ただ、このレベルの機関を一枚岩にするのは日本では厳しいでしょうね。名前だけ連携しても中はバラバラだし。結果としてこのスピード感によって、現在のATガイド養成にLNTの導入が間に合ったのは、将来大きな意味を持つ歴史的なラッキーとしましょう。

回りまくるソーシャルメディア

これを言われると、LNTJは痛いというところですが、LNTアイルランドのインスタがめちゃくちゃ回っているそうです。主な内容は以下のようなコンテンツ:

・ワークショップ・コース:常にどこかで行われているそうです。
・ボランティア活動募集:公園整備、トレイル整備など
・パートナー企業のイベント:全国規模の大手スーパーマーケットのLNTイベントが多いそうです。
・公園、動物保護情報:動物保護や、公園の運行情報など
・リクルート情報:自然保護関連の採用情報など

この要因の一つは、まずは上記の全国組織がLNTを採用しており、当然それらの下部には芋づる式に関連組織があるので、それぞれの組織が、LNTに関連するようなイベントを行えば、必然的に情報量は増えます。

また、ゴールドスポンサー12社、シルバースポンサー4社、ブロンズスポンサー21社、コーポレートスポンサー2社、連携団体46団体、公認学校11校、団体メンバー160団体以上と、圧倒的なネットワーキングから上がる情報量が、このSNSの回転を支えています。

LNTJでも、スポンサー団体メンバーはもちろん、自治体連携観光協会連携大学連携野外指導団体連携などさまざまな連携プログラムをバンバンローンチ中ですが、情報が吸い上げるシステムをもちょっと考えないといけません。また、連携協定の「調印」って、ちょっと硬いのかなあと思うのと、そもそもアメリカやアイルランドのLNTの認知率とは根本的に違うので、LNTを正しく使っていただくためにはしょうがないのかなあとの思いもありますが、ネットワーキングがLNT成功のいかに肝になるかがわかる情報ですね。

ちなみにも、アメリカも、FBインスタLinkedInなど持っていますが、平易な内容が多く、具体的な募集やローカルな情報は少ないです。これはやはり、あまり個別すぎてもアメリカという広大な国では活用できないのかもしれません。その点、ちょうど大きさも人口も北海道ぐらいのアイルランドは、ローカルな情報が活用しやすく、コミットメントが高いという強みもあるのかもしれませんね。日本も、地域のつながりは強いので、日本全体で考えるところと、地域拠点などを活かしてアクトローカルで考えるところをうまく使い分けていきましょう。

生活に浸透するLNT

これだけLNTが成功しているんだったら、自然公園のゴミ箱にLNTが書いてあってももう驚かないって思うかもしれませんが、これは公園ではなく、街角のゴミ箱です。LNTのロゴと一緒に、市のロゴ、公共団体のロゴ、企業のロゴなどがあり、どこからどうやってお金が回って、このゴミ箱が設置されているのか、リカさんの今後のリサーチ課題となりますが、これなら国民の100%がLNTを認知するわけです。行政も、企業も、学校も一枚岩って感じがヒシヒシ伝わってきます。

まとめ

世界で最もLNTが成功している国と言われるアイルランドは、生活の中にまでLNTが浸透し、産官学三位一体の連携と圧倒的なネットワーキングが印象に残りました。森本リカさんは、アメリカからアイルランドに戻ったら拠点を、LNTアイルランドの本部のある西部に移し、本格的にLNTアイルランドのお手伝いを始めるそうです。アイルランドでは小学校にLNTが導入されており、これからそのシステムを体験してくれることでしょう。アイルランドで世界最高峰のLNTのシステムを学び、日本のLNTの発展に役立ててくれる日を待っていまーす。

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