SEERってなに?

2026AEEアジアパシフィックリジョンカンファレンスに参加しています。今年で、開始から12年経つAEE APACですが、これまで実践発表が中心であったところ、今年から、シンガポールのスザンナの呼びかけで、研究セッションが加わりました。言語、文化、宗教、社会システム、全てが異なるアジアで、国を超えた研究成果の共有はなかなか起こりませんでしたが、AEE APACが安定的に開催されるようになった今、アジアの研究はAPAC版SEERを中心に回るのではないかと予想します。

1.AEEを知らない人のために
2.AEE APAC
3.2026SEER

1.AEEを知らない人のために

Association for Experiential Education(AEE、体験教育協会)は、1977年にアメリカで発足した、世界最大級の野外教育の学術集会です。当時の冒険教育の隆盛を受け、OBS、NOLS、PAなどの関係者が、大学と連携して立ち上げました。

毎年、北米各地で、AEE International Conferenceが開催され、いっときは参加者1000名を超えるなど、野外教育に関する集会として世界最大級です。同会が出版するJournal of Experiential Educationに掲載されることは、世界の野外教育研究者のステイタスです。

その後、「体験教育」という広義性や、PAを起源するチャレンジコースのインドア化、セラピューティック部門の発展などで、オリジンであった野外部門が弱くなったことにより、野外指導者たちが、AORE(Association of Outdoor Recreation and Education)を独立させるなど、長い歴史の中で、新しいものが加わったり、離れたりはありましたが、未だ野外教育研究に関しても、世界最高峰です。

また、冒険プログラムの業界基準を公認するAEE公認プログラムを開発しました。ACAのような教育キャンプ業界をカバーするまでには至らず、いくつの先鋭的な団体に限られています。アメリカ以外でも、香港、韓国、ベトナムなどで、公認事例があります。AEEアジアが急激な広がりを見せる中、満を持してAEE公認プログラムのワークショップがあり、超満員御礼でした。これからこのプログラムがアジアを席巻する予感です。

2.AEE APAC

AEE APACは、2014年に、AEEのジャーナルのレビューアーでもあったスザンナの呼びかけにより、シンガポールでスタートしました。最初は、2014年シンガポール、2016年香港、2018年台湾、その後COVID19で長期中断など、なかなか安定しませんでしたが、2023年よりシンガポール、2024年インドプネ、2025年香港、2026年タイバンコク、2027年には中国成都が予定されているなど、開催も安定化し、まさにアジアンワイドな動きとなっています。

復活後、オーストラリア、ニュージーランド、カナダなどイギリス系の欧米人の参加も活発となり、今日では、本家AEEカンファレンスにも劣らない、最近AEEに行っていないので、もしかしたら参加者だけでは超えている野外指導者の集会に一気に成長しました。

アメリカにない特徴としては、現在アジアではインターナショナルスクール産業が活況で(参考ブログ:What’s CAS、DofEアワード再考)、参加者の半分がインターナショナルスクールの教師、半分が野外プロバイダーと、野外の商談会の特徴も有していいます。また、インド大会以降は、すべてインターナショナルスクールが会場を提供するなど、アジアの野外マーケットにおけるインターナショナルスクールの存在感を示すものです。

3.2026SEER

野外プロバイダーとインターナショナルスクールの商談会化しつつあるAEE APACにおいて、スザンナは兼ねてから、アジアに行ける野外研究の発展の重要性を訴えていました。そして、今回が、カンファレンスのプレイベントではありますが、アジアの初のSEERとなったわけです。

以下の今回の発表の超要約です。

920 宇宙博物館における体験学習(台湾)
945 ハワイ大学における伝承文化教育(ハワイ)
1025 音楽教育における体験学習(シンガポール)
1050 OBIの10年間の効果研究(OBI/OBV)
1115 市民教育の効果の分類(オーストラリア)
1140 野外教育によるいじめられっ子の感情スキルの向上(インド)
1300 OBによるレジリアンスの向上(OBS)
1320 山岳地での生活体験で生きる力を育む(ネパール)
1340 ボディランゲージで言語を学ぶ(タイ)
1400 シンガポールの冒険教育マスタープラン(OBS)
1450 グループへの所属感とインストラクターとの関係性が教育効果に影響(OBH)
1450 リーダーシップから人間力へ(OBT)

OBインターナショナル、OBベトナム、OBシンガポール、OB香港、OB台湾といった、OBのスタッフが、第一回目のSEERは席巻していました。発表内容も、研究の手順をしっかり押さえていて良かったですね。ここからのアジア各国のOBの成功や発展をうかがえます。OBIの発表は、この10年間世界のOBSから取集したOBコースの効果研究でしたが、OBJのみ参加していないという。。。このあたりが日本の課題かと。

一方で、宇宙、伝承文化、音楽など、聴いている方もなかなかしんどい発表もありました。確かにインターナショナルスクールのCASのCreativeには、宇宙、文化、音楽が含まれており、インターナショナルスクールの教師からしてみたら必要な情報かも。アジアでも今後体験教育の枠組みが課題になりますなあ。1970年代に協会名として「体験教育」というワードを選択した野外の先人たちはこの状況をどう見ているのでしょうか。

集会後に、スザンナと話しましたっが、彼女としてももっと研究発表数を増やし、AEE APACにおける研究部門を活性したいとのことでした。その時壁となるのがやっぱり言語で、英語の発表だと、日本人はほぼ避けるでしょう。来年のカンファレンスは中国ですが、中国の大学教員にとっても、英語の投稿、発表は楽ではありません。今日AIを活用した、同時通訳のテクノロジーも日進月歩で進んでいます。来年の中国大会では、多言語のレジュメ、多言語の発表を実現しようと、アジアならでは研究集会の夢を語り合いました。

4.SEERに参加して

今回のSEERに参加しての所感です。アジアにおけるアウトドア産業、インターナショナルスクールの活況は以前ご報告したとおり。それに加えての新たな気づきです。

1)アジアのOBの研究力
単なる今回だけなのか、スザンナの呼びかけの影響があったのかわかりませんが、研究発表の約半数がOBからとういうのは驚きました。しかも研究手法もしっかりしています。日本野外教育学会の発表の半数が、OBJからって考えられます?それだけ、スタッフをトレーニングしているか、もしくは元々アカデミックレベルの高いスタッフを採用していないと起こらないことです。また、OBIの世界サーベイの60%がアジアから回収されています。シンプルに参加者が世界の中でもダントツに多いことを表します。これもひとえにOBがインターナショナルスクールの市場にしっかり入っていることを反映しています。

2)アジアの大学で働く欧米教員
今回の発表で、アジアの大学に席を置く欧米の大学教員が目立ちました。これは、オルタナティブな教育として、アジアの各大学が体験教育を導入していることと、人事を欧米のPHDに対していオープンにしている、もしかしたら積極的に招聘しているかもしれないという背景があります。体験教育の分野では、欧米は、日本の50年先をいっています。これをアジアの大学が導入し、同じレベルで教育、研究を進めたら、このギャプを埋めるのに50年はかからないでしょう。日本の野外に関しては、以前北教大に外国人枠がありましたが、現在は残念ながらゼロです。ただでさえ、アジアに後塵を浴びている日本が、アジアに追いつかなくなる日は近いのではないでしょうか。

3)やっぱり研究って楽しい
そういえば、研究集会って、数年ぶりでしたね。久しぶりに丸一日研究発表に集中して、改めて自分の研究にも時間を割きたくなりました。BCの定款の事業内容にしっかり調査、研究とあるのですが、協会運営、限られた時間でのBCの研修などに時間が忙殺され、ここ数年全く研究から遠ざかっています。大学教員時代の学生の興味を発展させた研究より、今は現場で本当に必要な研究課題がいくつもあるので、早く経営者として、人並みになり、研究という形でまた業界に貢献したいと思えた1日でした。

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本格的に野外指導を勉強し、指導者を目指したい方は、Wilderness Education Association Japanのサイトをご覧ください。