地形図から目的地までの山行時間を計算できますか?

さあ、週末は待ちに待った登山に行く予定です。登山計画を立てるために、ガイドブックとエアリア(昭文社山と高原地図)を買って、ルート見てみると、あれ?コースタイムが違うけど、どっちを信じたらいいの?って経験はありませんか?実はガイドブックによって、コースタイムの算出根拠は様々で例えばエアリアなら以下を基準とし、実踏で計測しています。

  • 40-50歳の登山経験者(比較的ゆっくり目ですかね。初心者なら時間がかかる)
  • 2-5名のグループ(人数が多ければ時間もかかる)
  • 山小屋利用前提の装備(45リットルぐらいかな?60だったらもっとかかる)
  • 夏山の晴天時(雨が降ったら時間がかかる)

だから、私が一人で下見に行く時は、経験上エアリアの登りが2/3、下が1/2ぐらいですかね。ですの、私が早いわけではなくて、必然的に早くなる理由があるからです。

このデータは人による実踏ですので、エリアごとにも若干差があって、このエアリアのコースタイムは余裕があるのに、こっちのエアリアのはきびしいんじゃない?なんてことあったりしませんか?また、古い登山道のコースタイムが示されていないことや、コースタイムが示されている区間をさらに細かく分けたい時に困ったことがあったともいます。

そんな時、このトリッププランのテクニックがあると、目的地までのコースタイムを計算し、自分にあった山行をマネジメントできるようになります。

  1. 目的地までのルートを、いくつかのセクションで区切ります。例えば、ピーク、コル、ルートの分岐点、尾根への取り付きなどなど。この時数10メートルの小さなピークとコルは無視していいです。ピークやコルがかからない方は、4地形のブロクを見てください。
  2. まず、セクションごとの水平距離を測定します。1/25000なら1cm=250m、1/50000なら1cm=500mですよね。この距離を、3000m:1hの割合で時間を計算します。あまり細かい距離までこだわらなくても大丈夫です。暗算でできる程度の大雑把感でいいです。
  3. 次に、セクションごとの標高差を作成します。もし登りなら300m↑:1h、下りなら600m↓ に対して、1hの割合で時間を計算します。この時もあまり細かい標高差にこだわりすぎず、暗算でできるくらい、大体で大丈夫です。
  4. 最後に、水平距離の移動時間と、垂直距離の加算時間を足せば、セクションごとのコースタイムが分かり、セクションを合計すれば、その日の目的地までの時間がわりますよね。
  5. ちなみにオフトレイル、例えば、やぶ、沢、雪などを歩く時は、水平距離を1500m:1hと計算します。

以上をまとめると、

オントレイル 3000m:1h
オフトレイル 1500m:1h
エレベーションアップ 300m:1h
エレベーションダウン 600m:1h

となります。3000m以上では、酸素分圧の低下により、標高の要因も計算に加わるのですが、3000m以上での山行がほとんどない日本では、この公式さえ頭にいれておけばほぼどこでも通用します。富士山の8合目からなんとなく足が重たくなるのを例外とするくらいでしょうか(ただし高度障害は発症する標高が人によってさまざまであることをお忘れなく)。

で、重要なのはこれからです。これはあくまで標準山行時間と考えてください。登山のペースは、体力、人数、ザックの重さ、経験、目的などで様々です。つまり、この標準から、その時の山行にあった適切なペースを算出する必要があります。

  1. まずは、しっかりコースタイムをとる習慣をつけましょう。スタート時間とゴール時間だけの計画で安全な登山はできません。
  2. トリッププランのセクションごとのコースタイムを記録して、標準タイムと比較し、何割ぐらい早いのか、遅いのか理解します。
  3. 数セクション繰り返すことで、差の割合が安定してきたら、残りのルートのトリッププランを自分たちにあったら割合で計算しなおします。
  4. 疲労などでペースが落ち始めたら、新たな割合で残りのルートを再計算します。

よく、登りで2倍時間がかかっているのに、下はコースタイム通りならまだ間に合うと言って、無理に下山を開始し、途中で日が暮れて、大きな事故になるケースもあります。登りで2倍かかったら、下も2倍、疲労も考えるとさらに時間がかかると考えられます。

現在、様々な山のガイドブックが出版されていますが、上述した通り、コースタイムの算出にそれぞれの根拠があり、必ずしも、同じデータとは限りません。そんな時に、このトリッププランのテクニックがあれば、ガイドブックに頼らずにコースタイムを算出し、ガイドブックに情報がないルートも、計算が可能となります。加えて、ガイドブックでは、コースタイムに目が行きがちですが、このトリッププランでは、地形の変化や、登り下りなどの情報に注目するため、今まで以上に地形図が読めるようになります。一度、みなさんの山行計画を、このトリッププランで立ってみてはいかがでしょうか?

ご興味のある方はぜひ無料のメルマガにご登録ください

トリッププランについて詳しく知りたい方は、アウトドアリーダー・デジタルハンドブックを参考にしてください。

本格的に野外指導を勉強し、指導者を目指したい方は、Wilderness Education Association Japanのサイトをご覧ください。

backcountry classroom Incが提供するオンラインサロン「Be Outdoor Professional」では、みなさんの野外の実践、指導者養成、研究に関するお悩みを解決します。また、日本全国の野外指導者と情報を共有し、プロフェッショナルなネットワークづくりをお手伝いします。1ヶ月間お試し無料ですので、ぜひサイトを訪ねて見てください。