WFA実践ガイドライン
2010年2月16日
はじめに
野外で生活、業務、余暇活動を行う人は、伝統的な応急処置の方法では、予想される状況に対応するには不十分である。彼らは、離れた場所、きびしい環境、通信集団やレスキューが不安定、装備が不純な状況で、自立して処置と避難を判断しなければならない。そのために、医療と野外の専門家は、このニーズを満たすために、野外救急コースを開発した。まず、専門家はそれぞれの意見を提出し、次に、経験と科学的根拠を元に、それらを発展させ、野外救急法実践ガイドライの合意形成に達した。
このガイドラインは、一般の人々、野外プログラムの主催者、野外救急法コースの受講者が、適切なコースと資格を選択するための一助とする。野外救急法プロバイダーに対し、意図した対象者と、期待される知識とスキルを示している。生徒や組織のニーズは、立地、対象人数、経験値によって様々であるため、このガイドラインは、必要最小限で、厳選した項目とスキルを示した。最終的には、ニーズを満たすために、プロバイダーを選択することは、個人や組織の責任となる。
野外救急法は、優れた教育者であり、経験のある野外指導者によって、直接体験、ケーススタディ、シミュレーションなどの教授法を通じて教えられるべきであるという考えはあるが、意図的に教授法や、カリキュラムデザインに関する情報は示していない。これらは、個々の機関、コースプロバイダー、スポーサーの裁量である。同様に、公認団体、指導者資格に関しても、含まれていない。このガイドラインは、カリキュラムの推奨や、プロバイダーの質を保証するものではない。
ワーキングメンバー
David E. Johnson MD, FACEP President and Medical Director/Wilderness Medical Associates/Wilderness Medical Associates Canada
Tod Schimelpfenig EMT, FAWM Curriculum Director/Wilderness Medicine Institute of the National Outdoor Leadership School
Frank Hubbell, DO Co-Founder/Medical Director SOLO Board of Medical Directors, NH
Lee Frizzell, WEMT Co-founder/Executive Director SOLO
Paul Nicolazzo,Director of Wilderness Medicine Training Center
David McEvoy, Director of Aerie
Carl Weil, Director of Wilderness Medicine Outfitters/ Master Fellow of the Academy of Wilderness Medicine
Andrew D. Cull, Chief Executive Officer Remote Medical International, Nadia Kimmel RN WEMT Director/Desert Mountain Medicine
支援団体
Mike Ditolla MS, WEMT-P FAWM Program Director of University of Utah, Center for Emergency Programs
Mike Webster, Executive Director of Wilderness Medical Associates Canada.
David Yacubian NatureBridge Director of Risk Management/Nantahala Outdoor Center Jonathan Bryant
Pat Malone, Director of Initiative for Rural Emergency Medical Services University of Vermont
Justin S. Padgett, MS, NREMTP Executive Director of Landmark Learning
Tim Mertz, Association of Outdoor Recreation and Education
WFA概要
WFAコースは、医療の専門家のコースではない。
・応急処置に副次的な責任をもつもの
・より高度な訓練を受けたもののアシスタントとして動くもの
・人々を野外でガイドする能力があり、効果的な危機対応ができるもの
・個人、家族、友人と旅行にいくもの
以下の状況における
・救助隊が8時間以内に到着し、その助けを受けて避難を行うことができる
・日帰り、キャンプ、定住型のウィルダネスキャンプ、週末の家族旅行、フロントカントリーの野外レクリエーション
以下の資格が追加で必要である
・成人、子どものCPR
・AED
定義
・コア:WFAに示された期待されるスキル
・選択:特別な参加者に対する補足的なスキル
コース概要
・WFAは、実践や繰り返しの練習を中心とする16時間のコースである。コアトピックを網羅できる最小限の時間である。
コアスキル
・ケガや変形を同定できる全体検査、傷病歴と共に兆候、症状、バイタルサインの評価
・活動、環境による傷病の予防
・緊急事態を安定化するための処置(固定、創の処置、脊椎固定、温度調節)
・持参薬を用いた傷病者のケア
・避難レベルの適切な判断
薬品
WFA取得者は、個人の処方薬(ニトロ、アスピリン、吸引器)を持っている傷病者のケアを、医師の指示のもとするかもしれない。WFA取得者は、傷病者が、処方薬を服用すべきかすべきでないか、判断すべきではない。
以下はWFAに含まれない
・牽引固定
・創の縫合
・アナフィラキシーに対するエピペン以外の処方薬
・注射減圧
・挿管
・野外での止血帯の解除
・複雑な疾病評価
訓練による付加的スキル
・肩と膝蓋骨の受動的整復
・脊椎評価と固定
コアスキル
傷病者評価とBLS
・全体評価(安全性の評価)
・一次評価
○呼吸器系
-基本的なBLS技術か回復体位による気道確保
-マスクによる適切な換気
○循環器系
-心拍数と生命兆候の評価、胸部圧迫、もし可能であればAED
-直接圧迫、バンテージ、止血帯を用いた深刻な出血の止血
○神経系
-意識レベルの評価、脊椎損傷の理解とマネジメント
-意識のない傷病者の気道の確保
・二次評価
○怪我や変形を同定する全身検査
○バイタルサインの測定と観察(意識、心拍数、呼吸数、皮膚)
○傷病歴の聞き取り
○傷病者の変化の観察
○収集したこデータと評価と処置の記録
・避難の計画、実施と、救助への連絡
以下は含まれない
○血圧の測定
○肺の音の評価
○瞳孔の評価
○複雑な疾病の評価
○挿管
○注射減圧
循環器系
・ボリュームショックの一般的な原因の同定
・ボリュームショック兆候と症状の認識と、交感神経性急性ストレス反応違いの特定
・適切な処置
○意識のある傷病者に対する経口の水分補給
○怪我の安定化
○直接圧迫や、バンテージや止血帯による外出血の統制
○きびいし環境からの保護
・ボリュームショックの危険がある傷病者の避難開始
○体液の損失が止められない
○好ましくないバイタルサイン
○体温の維持ができない
心疾患
・兆候と症状の認識
・一次処置
○運動中止
○意識がある傷病者に処方薬(ニトロ、アスピリン)の処方
・避難と救助要請
呼吸器系
・一般的な原因と、呼吸不全、呼吸困難(喘息、気道閉塞、外傷)の兆候と症状の認識
・一次処置
○楽な体位
○気道と換気の確保
○処方薬(吸引器)を用いた傷病者のケア
・深刻な呼吸不全の危険がある傷病者の避難開始
○呼吸が改善されない
○処置に関わらず症状が悪化する
○不自然な心理状態
以下は含まれない
○喘息の処置へのエピネフィリンの使用
神経系
・主な原因(外傷、温度、低酸素、低血糖、発作)を理解する。
・頭痛、警戒的な心理状態の兆候と症状を理解する。
○意識あり+警戒
○意識なし
○脳震とう、錯乱
・頭痛に対する一次処置
○気道確保
○脊椎固定
○厳しい環境からの保護
・外傷のない不自然な意識状態
○経口の糖質
○高温環境での冷却
○軽度低体温に対する加温
○低酸素に対する換気、酸素吸入
○傷病者の保護(気道、脊椎、環境)
・深刻な神経系の障害がある傷病者の避難開始
○警戒的な意識状態、錯乱
○意識の低下
○処置をしても改善がない
脊椎損傷
・脊椎損傷のメカニズムを理解する。
○意識喪失がある落下
○強い力のかかった外傷(MVA、クライミングのフォール、スキー、マウンテンバイクの転倒)
○3フィート(1メートル)以上からの落下
○頭部や臀部からの落下
・脊椎損傷の兆候と症状を理解する
○脊椎の圧痛
○末端の運動神経、感覚神経の損失
○意識ない、不自然な意識状態
・処置の開始
○脊椎の安定化
○傷病者を検査、保護するのときに、ロール、リフト、牽引
・脊椎損傷の危険の高い傷病者の避難では輸送の方法を適切に判断する
創
・命の危険ある出血を理解する
・単純な創とハイリスクの創(汚染、海洋、複雑な創、関節の開放、咬傷)を区別する。
・処置の開始
○直接圧迫や、バンテージや止血帯による外出血の統制
○創の洗浄(高圧洗浄、ポピドン溶液)と保護
○バンテージによる圧迫
○水疱の処置
○異物が刺さった創の処置
−気道の異物の除去
-刺さった異物を除去して良いのは四肢のみで、異物の安定化ができず、簡単にとれてしまい、異物が原因で出血の統制ができない場合に限る。
・局所、全身感染の兆候と症状を理解する
○局所感染の処置:保温パック、膿の促進、観察
○全身感染の処置:同上に加え、避難
・予防:MRSA、衛生管理
熱傷
・表層と深層の違いを理解する
○深さ:表層か深層
○広さ
○ハイリスクな場所:掌、足の裏、顔、気道、股間
・処置
○冷却、衛生、保湿、粘着性のあるバンテージをしない
○避難の判断
・予防:日焼け、熱湯
・ハイリスクな創、熱傷の避難。ほとんどの熱傷は、傷病者が不快であり、遠征を継続することができないため避難する。
以下は含まれない
○縫合
○生命の危険のある止血帯の開放
○処方の抗生物質の投与
筋骨格系のケガ
アレルギー反応
アナフィラキシー
熱障害
低体温症
落雷
溺れ
一般的な疾病
選択制のトピックス
脱臼
脊椎評価テスト
低温障害(凍傷、費凍傷性障害)
高山病
毒
野外毒:ヘビ
野外毒:クモ、サソリ
野外毒:海洋